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1.里山保全の意義

 

明治初隼、自由民権は山からといわれた。それはいまからみると不思議なようだが、その頃の中山間地域は宝の山であった。エネルギーの供給基地、建材や家具の素材供給基地、蚕糸・織物の生産地、農業・牧畜の基地であり、経済的に発展し、そこから当時の思想をリードする政治家や科学者が生まれたのである。それが近代化とくに高度成長のエネルギー革命以後は一変し、もっともおくれた荒廃地域になってしまった。
しかし里山はその名のしめすとおり、都市や農村集落と自然との境界・連帯領域であり、生態系のみならず生活資源の総合的な連関域であったのである。いま、ここが荒廃し、廃棄物の捨て場、あるいはゴルフ場・スキー場・別荘などをはじめ観光開発の地域となっている。この里山の危機は生態系の危機そして中山間地域の農村の危機であるだけでなく、都市の危機でもある。

 

2.大震災の教訓と都市・国土保全

 

1995年1月の阪神淡路大震災は、今日の都市の危機を明らかにしめした。ここには、今後の都市の政策に関する多くの教訓があるが、とくに重要なのは自然の保全などのアメニティのなかったところは安全(セーフティ)もなかったということである。神戸市の都市経営にみるように里山をくずして、海を埋立てるという自然破壊による開発をすすめて、インナーシティ(都心)の再開発をおこたったことが被害を大きくした。神戸市は公園の広さや都市農業を誇っていたが、それはすべて郊外部のことであった。神戸市の公園面積は一人当り12?uとなっているが、中心部はわずか2?uにすぎず、有名な都市農業の観光施設などもすべて郊外であった。この教訓から、まず都市には農地や林地など多様なみどりのある自然を残し、オープンスペースを大きくしなければならぬことが明らかになった。大都市圏における最大のオープンスペースは農地であるが、まちがった政府の政策とバブルで、宅地なみ課税が施行され、都市農地は1/3しか残らぬこととなった。

 

 

 

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